【種目別とリハビリテーション】
陸上短距離 ハムストリング肉離れ
陸上短距離におけるハムストリング肉離れの発生機序は、スタート時においてはハムストングへの伸張性収縮が起こり、ダッシュでも同じようにハムストリングに対するストレスで肉離れが発生する。 そもそもの原因は、ハムストリングという筋肉群が二関節筋であり、地面を蹴り上げたときの動きでは股関節が伸展し、膝関節も伸展する。 このときの股関節側の筋に動きは収縮であるのに対して、膝関節側では伸展の収縮形態であり、この上下別々の動きの間で筋が断裂しやすくなるのである。
肉離れは、再発するケースが多いので、健側と患側の比較やQH比などをチェックしてリハビリテーションを組み立てる必要がある。 また受傷時と同じストレスは、高いリスクを持つので、特に注意する必要がある。 受傷直後から開始できるものには、患部外トレーニングがある。 上半身や健側のトレーニングなどは積極的行なうべきである。
初期のリハビリテーションにおいては、筋の廃用性の萎縮防止と可動域の確保である。 トレーニングは痛みの許す範囲で、坐位での枕つぶしなどのアイソメトリックの動作から導入する。 また股関節屈曲および膝関節関節伸展の急ぎすぎる関節可動域訓練は、再断裂を引き起こすリスクもあるので注意が必要である。
可動域が出せるようになれば、徒手やチューブでのレッグカールなどのOKCのトレーニングを導入する。 その後はSCKCへと発展させ、マシーンによるレッグプレスやエアロバイクなどによって荷重を増やしてゆく。 最終的にはKBWからランジウォーク・Jogなどへと発展させてゆき、ウェイトを用いてのCKCトレーニングや、片足立ちやバランスディスクなどを用いてのバランス・協調性のトレーニングも行なってゆく。
Jogが可能となってきた時期からは、実際の競技動作の動きを導入する。 十分なウォーミングアップを行い、Jogからの加速や減速。 陸上短距離でもトラックではカーブ走があるため、方向転換としてサークル走の導入。 スタート練習では、立位での倒れ込みで勢いをつけてからのスタートから開始し、静止したクラウチングの姿勢へと段階的に発展させてゆく。 ハムストリングに対する伸張性のストレスに耐性を作り直す為にデプスジャンプなどでプライオメトリクスのトレーニングも合わせて導入する必要がある。 スパイクの使用に関しては、ランニングシューズでの直線走80%まで回復してから、使用を許可する。 許可後も先ずは60%程度からのランニングを開始し、徐々にスピードを高めてゆく。 スピード練習ではピッチとストライドの測定を行い、スピードコントロールを養う。 その他、トレーニングの負荷は距離・本数・インターバル・練習頻度などを用いて発展させてゆく。
競技復帰の目安は、前述の通り健側比やQH比である。 サイベックスなどを使用するケースや、周経囲や徒手などによる筋力評価を実施する。 実際の走行でのフォームのチェックや痛みの確認などを行い、最終的にはドクターの診断を受けてから競技に復帰すべきである。
Copyright ©Style1 All rights reserved.Never reproduce or repablicate without written permission.
|