【種目別とリハビリテーション】
アメフト・ラグビー 腰痛
アメフトやラグビーでの腰痛の発生機序は幅が広く、スクラムやモール・タックルでのコンタクト時に直接打撃によるものや、同じくスクラムなどにおける重心を下げた低い姿勢の維持などによる腰部への過負荷が原因となるケースが多い。 特に低い姿勢の腰痛は、股関節屈筋群である腸腰筋や大腿筋膜腸筋・大腿直筋などの過緊張と引き起こし伸展時に痛みを伴う伸展型腰痛となる。 筋の拘縮は、骨盤前傾と腰椎前弯を増大させ、疼痛や運動時痛などの症状がある。 これは伸展型腰痛の形態であり、内的要因としては、上記の筋の過緊張や、大殿筋やハムストリング、腹筋の筋力低下などによる骨盤後傾の制動性の低下が考えられる。 またパス動作などが関与する、回旋型の腰痛もこの伸展型と同じく、腹筋の筋力低下を含み、そして体幹の回旋動作の中で、回旋側の腰方形筋の過緊張などが発生要因となる。 肩関節の可動域低下は、ロングパスやラテラルパスでの代償作用として体幹での動きを増大させ、回旋型腰痛の発生要因となる。 それに加え下腿三頭筋のタイトネスは、スクラム時などに重心を後方に引き、骨盤前傾の大きな悪いフォームにつながりやすい。 外的要因としては、スクラムでの大きな外力があり、強制的に伸展・回旋を加えられ腰部に対するストレスの増大などが考えられる。
腫脹症状の少ない腰痛では、リハビリ初期の目的は、ペインコントロールである。 リスク管理として膝関節を屈曲位にして痛みを和らげながら、仰臥位にて骨盤ティルトなどを行い、骨盤周りのモビリティーの回復から開始する。 その後、大腿四頭筋や腸腰筋のストレッチなどで関節可動域の改善や、アイソメトリックでの筋力トレーニングとして、膝関節を屈曲位仰臥位での下腹部へのバットを当てた腹圧を高めるトレーニングや臍覗き込み運動を実施し、腹腔内圧を高められるように改善してゆく。 また、患部外トレーニングは初期の段階から行なっておくべきである。
徐々に徒手やチューブによるアイソトニックでのレッグレイズやクランチを展開してきた段階で、腰椎骨盤リズムの改善としてバランスボールを使った骨盤ティルトを開始する。 骨盤前傾・後傾・側屈・回旋なども行い、骨盤周りの筋肉との協調性を高めるトレーニングを行う。 また、筋力低下が考えられる股関節伸筋群のトレーニングを無荷重から半荷重、全荷重へと負荷を増やして行き、動きも単関節から複関節へ発展させる。 リハビリ中期での目標は股関節伸筋群だけではなく、股関節屈筋・内転筋・外転筋・深部筋なども強化し、低い姿勢でも耐えられる股関節周囲筋群の強化を行ってゆく。
競技復帰前のプログラムは、方向転換・ジャンプ・パス・キック・各種コンタクト・タッチダウンなど様々なものがあるが、先ずはリスク管理として、ウォーミングアップを十分に行い、痛みや不安感などがある場合はテーピングやコルセットなどの使用を検討する。 特に腰痛では姿勢・フォームのチェックと、コンタクト練習が重要であり、タックルバッグやスクラムバッグを使用し、シチュエーションでのコンタクトから開始する。 その後、アンシチュエーション、そして対人へと発展させる。 その後、ボールを使った状態でのモールやスクラムの練習へ移行し、ミニゲーム形式で行う。 最終的には腹筋と背筋の筋バランスやスクラム姿勢のフォームチェックなどを確認してから試合などへ復帰させてゆく。
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